「抗日戦争」と「世界反ファシズム戦争」勝利記念日80周年を迎える9月3日、中国では、大軍事パレードを含む全国的な記念行事が行われます。
これには各国首脳や国際機関の要人が広く招待されています。ところが日本政府は外交ルートを通じて、膨大な経費を使って、各国に「参加を自粛するよう」呼びかけたそうです。理由は要するに「中国の“反日”プロパガンダだ!」と言いたいようです。
これは中国人民に対する悪質な侮辱なだけではなく、世界の反ファシズム戦争で犠牲となった無数の人々に対する侮辱であり、そして何よりも、歴史を正視し、「反侵略・平和」と中国やアジアの人々との友好を希求し、日々奮闘する良心的な日本人に対する最大の侮辱でもあります。
言うまでもなく、第二次世界大戦の基本的“定義”は、別に中国が言っているだけではなく、国連をはじめ、世界共通のものです。アメリカを含め、敗戦国の「ドイツ」も同様です。確か日本も「ポツダム宣言」を受諾し、戦後日本が出発したのではなかったのでしょうか?!
おそらく未だに“別の定義”をしたいのは世界中で「日本(の政府)」だけでしょう・・・。では、日本の「定義」とやらを公言して欲しいものです。「大東亜共栄圏?」「アジア解放?」・・・。
ところで、アメリカが脅迫するならともかく、日本の“顔色”をうかがう国がどれ程あると思ったのでしょう。つい数日前、中国がこの「軍事パレード」をはじめとする記念活動に参加する各国首脳の名簿を公表しました。首脳級だけで26カ国です。前回行われた軍事パレード(2015年)より約10カ国増えています。
さて、“別の定義”をする国は「日本だけ」と書きましたが、少々不正確でした。もう一つあります。かつて日本の植民地であった「台湾」です!
第二次大戦における日本の降伏から80周年を迎えるにあたって、各国政府が様々な談話を発表していますが、台湾の賴清徳・民進党政府もマスコミを通じて談話を発表しています。
信じ難いことに、この談話の中で、台湾側からすれば本来ならば戦勝記念日とすべきところを、賴清徳総統は敢えて「終戦記念日」と表現し、日本のおける過酷な植民地支配は無論、台湾民衆の「反植民地・解放闘争」にまったく触れませんでした。無論これは偶然ではありません。
詳細は省きますが、日本の台湾侵略、植民支配において、台湾民衆の抵抗運動は領有当初の「台湾民主国」の闘い(1895年~この年だけで24件の抗戦があり、遺棄死体だけで1万余人が記録されている)をはじめ、台湾総督府の記録だけでも、1857年から1900年の4年間だけで、先の「台湾民主国」関連の戦闘を除いても、台湾民衆による襲撃、戦闘は8258件に及び、殺された日本人が2124人となっています。台湾民衆側の膨大な犠牲はおして測るべしと言えるでしょう!
1947年台湾で出版された『台湾年間』では、1895年~1915年の20年間だけで、規模の比較的大きい、主な抗日事件が99件記録されています。台湾植民地時代、台湾民衆の犠牲者は10万人を超えると推計されています。
日本の中国全面侵略と台湾植民支配の確立と共に、こうした武装抵抗は1930年の「霧社事件」でほぼ終息しますが、その後も“合法的な”抵抗運動が延々と続けられ、植民地下にあっても、一部の青年たちは秘かに大陸に渡り、中国での「抗日闘争」に合流していきます。台湾人民は紛れもなく中国抗日戦争の一翼を担ってきたのです。
韓国の尹(元)政権と同様に、日本植民時代の「親日=対日協力者」を源流とする民進党政権が、こうした台湾民衆による凄まじいばかりの「抗日・解放闘争」の歴史を抹殺しようとする姿勢は、今なお政権を握る、「戦犯」の末裔(または本人)である安倍、麻生、岸田、松下幸之助(*「松下政経塾」)等が「敗戦」を「終戦」と言い換え、歴史の改ざんに汲々とする姿と“瓜二つ”と言えるでしょう。
ついでに言うと、中国は、「抗日戦争」はすべての中国人民の勝利であるという立場から、台湾にいる元国民党兵士にも、この軍事パレードなどへの参加を要請していますが、賴政権は「台湾人(*特に元国民党兵士)は参加してはならず、もし参加すれば法的処置を行い、軍人恩給を停止する」とまで脅しをかけています。これまた日本の姿勢とそっくりそのままと言えないでしょうか。
こうした民進党とは別に、数年前台湾議会を占拠し、今回は「“合法的”クーデター=野党議員のリコール運動」を強行したいわゆる「青鳥(チンニャオ)グループ」の若いリーダーが「我々(当時?)は日本人であり、戦争で負けたのに何を祝うというのか?!」と公言しています。「植民地支配」と歴史に対する無知と言うべきか、「民族意識の崩壊」と言うべきか、植民支配の「遺毒=倒錯」が今なお台湾(特に若者たち)の精神を蝕み続けているという現実を見誤り、無邪気に「台湾の民主」を称賛する日本社会に巣くう意識こそが、その実「台湾有事は日本有事」という侵略思想を受け入れる基盤となっているように思えてなりません。
(2025/8/30 墨面記)