高市首相の国会における、台湾に対する中国の武力行使が行われた場合の「存立危機事態・集団的自衛権行使」発言と、それに対する中国在大阪・ 薛剣総領事の強硬なコメント、さらにはその発言(=“斬首?”)に対する日本社会の「反発?」がマスコミやネット上で騒がしく報じられています。
マスコミによる“報道パターン”から、この報道内容に決定的な「曲解」がある事はすぐに分かりました。。少し調べただけで、案の定、真相が明らかになります。マスコミはこの“斬首”発言と、この発言の「法理」根拠を示した翌日のコメントを意図的に隠し、“感情的”に訴える“一言”だけを際立たせ、「本意」をすり替える手法です。
是が非でも隠したかった、薛剣総領事の発言内容は、国連憲章の「敵国条項」に触れたものです。この「敵国条項」は政府や右翼が決して触れたくない、歴史改ざんと再軍備化を根底から覆す法的根拠だからです。
国連憲章・第53,77,107条のいわゆる「敵国条項」は、敗戦国(日本など)が再び侵略に向かえば、中国などの戦勝国は国連常任理事国の批准を必要とせずに直接軍事行動を含む反撃する権利があるというものです。安倍や歴代右翼が常々「正常国家」をめざすと嘯くのは、実はこの条項の撤回、または無効化を意図したものです。
日本が(既に受け入れているはずの)歴史事実の改ざんや再軍事化するのは明確な国際法違反であり、戦後体制を変えようとする試みと見なされます。同じく「敗戦国」であるドイツの“慎重さ”を見れば明らかでしょう。戦後の「一国覇権」のもと、アメリカによってこの条項が恣意的に運用されてきたに過ぎず、日本が「敗戦国」であるという立場を忘れ、明確に「存立危機事態・集団的自衛権行使」を公言した以上、中国がその目論みを“斬首”するのは国際法の履行であり、国際的な責任とも言えます。
薛剣総領事の発言によって、世界はこの事実をあらためて思い起こすことになったのです。アメリカの“庇護”を失ったとき、この条項は文字通り、歴史改ざんと再軍事化を目論む政府や右翼にとっては致命的な一矢になるものです。焦点隠しに汲々とするのも当然と言えば当然でしょう。
逆説的に言えば、不幸にして、今回の“騒動”から、日本が一貫して画策し続けていた、「加害史」をいつの間にか「被害史」に塗り替える“成果”が顕著に表れたとも言えるでしょう。
日本が台湾を50年間にわたって植民地統治し、抵抗する数十万の台湾民衆を虐殺し、樟脳や巨木、砂糖、米をはじめ、ありとあらゆる物資を略奪し、数万の青年を「皇軍兵士」として各地の侵略最前線に送り、“砲弾の露”として消耗させ、あまつさえ残った女性たちを「慰安婦」として蹂躙し続けた歴史を日本は忘れたのでしょうか?台湾民衆をはじめ、中国民衆は決して忘れてはいません!
戦後、日本はポツダム宣言を受諾し、無条件降伏と共に、侵略戦争を反省し、日中友好と平和共存を約束し、憲法の上でもそれを明記したはずです。台湾を含む中国人民もまた「恒久平和」を希求するという立場から、この痛恨の怨みを“保留”し、まさに身を切る思いでこれまでの罪行を赦したのです。
その舌の根も乾かない今日、高市の発言は公然と「両岸のゴタゴタに乗じ、再び侵略してやる」と言っているに等しいものです。
台湾を含む中国人民の怒りの深さを理解できないのでしょうか?!薛剣総領事のコメントは中国民衆の“心の声”を表したものに過ぎません。
高市の妄言が「日中共同声明(1972)」や「日中平和友好条約(1978)」などのいわゆる「四文書」に違反していることや、その後の展開に関する「因果」や「正邪」を長々と言うつもりもありません。一つだけ付け加えるならば、日本の「9.18偽満州侵略」や、「7.7中国全面侵略」の時もこの「存立危機事態」が“錦の旗”として使われたことだけを付け加えておきます。
日本(高市)の意図は単純かつ明白です。国内的にはこの喧噪を利用し、日本をさらに武装化=軍国化することであり、国際的には台湾をめぐって中・米を闘わせる、言い換えれば「アメリカ」をこの戦争に引きずり込んで“漁夫の利”を得ようとするものです。今もって「アメリカ一国覇権」という“美夢”に酔い痴れているのでしょう。
さて、高市は「何をもって強大な中国人民解放軍と闘う」つもりなのでしょうか?
日本の“先進的な?装備”のほとんどはアメリカ製の兵器です。アメリカは戦闘機や、ミサイルなどほとんどの兵器を「ロックオン」できるコードを掌握しています。最近では「印・パ戦争」でパキスタン側が「F16」戦闘機が使えなかったのも、イスラエルがイランを爆撃するのに、その戦闘機が通過する国々(*すべてアメリカの「同盟国」)のレーダーがロックオンされたのはその一例です。
各国に提供した(売った)兵器は「アメリカの必要と思惑」に応じてのみ使用可能という現実があります。
さて、そのアメリカは高市の期待通り、それらの兵器を使って中国を攻撃すること容認するでしょうか?
これまた日本ではほとんど報道されていませんが、つい先日、トランプは記者会見において、記者からこの高市の発言と薛剣総領事のコメントについて意見を求められました。これまでなら:「薛剣の発言はけしからん!アメリカは確固として同盟国・日本の側に立つ!」と言うところでしょうが、実際の発言は:「同盟国は友人ではない。彼らは中国以上にアメリカを利用して利益を得ている。私は中国や習近平とはうまくやっている・・・」と答えています。脈絡からこの「同盟国」が「日本」を指すことに疑いはないでしょう・・・
日本が仰天したのは当然として、さらに仰天したのが「台湾」です。
日本がこの手の発言(高市発言)をすると、台湾の賴・民進党政権は鳴り物入りで「日本が助けてくれる・・・」と大々的に情宣するのがお決まりのパターンでしたが、今回にかぎっては目立った反応は皆無です!それどころか、逆に在野勢力からの攻撃材料にさえされている始末です。アメリカの“意外な”反応と変化を薄々嗅ぎ取った為でしょう。
・・・長くなったので、最後にアメリカの姿勢(変化?)について、詳細は省き、概略と結論だけ述べたいと思います。「民主」「共和」、さらに「タカ派」「ハト派」を問わず、「中国」は最大の「仮想敵国」であるのは当然としても、「決して直接対戦してはならない」と言う点では完全に一致しています。
特に中国の「9.3軍事パレード」以後、(「レアメタル供給問題」を含めて)これはアメリカの共通認識と言って過言ではありません。いわゆる「台湾有事」における中・米の直接軍事衝突において、「第一列島線」は言うに及ばず、「第二列島線」でも米軍が優位に立つことはありません。万一アメリカが負ければ、「一国覇権」は瞬時に崩れ去り、逆にもし介入しなければアジア諸国の信頼(*安全保障)を失います。いわば「両難」の状況に立たされると言えます。政治的な“強硬な”発言はともかくとしても、中台両岸の戦争を避けたいというのが本音である事は疑いようのない事実です。
賴・民進党への冷遇(「台独」姿勢に対する不快感表明、就任約2年で未だ渡米を許されない等々)、第一列島線内の基地兵員の移動(後退)、ランド研究所をはじめとする各シンクタンクによる「模擬演習」の不都合な結果、米中ホットライン設置の懇願、果てはつい先日韓国で行われた首脳会談で「台湾問題」回避、会談前後のトランプによる“歯の浮くような”お世辞(曰く:中国は偉大な国で、習近平は聡明で、偉大な指導者だ。私たちは良い関係だ・・・ウンウン)、特にこの会談をあらためて「G2首脳会談」と位置づけたことは特筆すべき変化と言えます。中国による台湾平和統一の支持表明等々、これらの兆候は明確に「台湾」をめぐる戦争回避の方向を指しています。(*無論アメリカが台湾から手を引くと言うことではなく、非軍事介入はこれまで以上に熾烈になるのは当然ですが・・・)
中国の弱体化を謀りつつも、米中直接戦争だけは避けようとするアメリカ、戦争を挑発し、アメリカを引きづり込もうとする日本と台湾民進党・・・アジアにおける今日の“危険な”構図と言えるのではないでしょうか?
墨面記(2025/11/15)