山橋宏和さんの講演内容

山橋宏和さんの講演内容 
(「中国という平和発展モデル」山橋宏和さん論考)


中国という平和発展モデル 山橋宏和


はじめに                          

 この集会は1937年7月7日、日本軍国主義が中国への全面侵攻を開始した盧溝橋事件を歴史の戒めとし、二度とこのような侵略戦争を起こさないよう後世に伝えるため、この時期に行うものです。

 中国の人々は日本軍に侵略されながらも、決して反撃の手を緩めず、最後には日本軍を一人残らず中国から叩き出しました。このころによく言われたスローガンが「粟と小銃」です。

 「粟(あわ)=(粗末な雑穀)を食べながら、武器は小銃しかなくても、重火器で武装した日本軍を打ち負かすぞ!」というスローガンです。今私が持っている中国製のスマホはXiaomiです。Xiaomiは中国語で小米(シャオミ)、粟(あわ)です。創業者がこのXiaomiという社名に込めた思いは自ずと明らかでしょう。

 中国はアメリカや日本のように、他国を軍事力で侵略して資源を奪って成長してきた国ではありません。むしろ侵略や経済制裁をはね返し、自力更生、刻苦奮闘で発展してきた国です。

 帝国主義は周辺から収奪することで自国だけが富み栄える経済でした。中国は帝国主義から経済封鎖される中で、自国の中にすべてのサプライチェーンを構築することで発展してきました。世界を一つの人類共同体と考えるなら、そこにはもはや周辺はありません。中国が構築した周辺のない経済発展モデルこそ、そのまま世界平和発展モデルなのです。なぜ、西側の政治学者や経済学者は、この中国の平和発展モデルに学ぼうとしないのでしょう!?

1、中国は世界の工場

すべての産業チェーンで製造ラインを持つ
ほぼ全ての製造業で世界最大の生産能力を持つ
世界のサプライチェーンの中間点に必ず中国が入る

国連統計部(UNSD)が定める 国際標準産業分類 ISIC       (International Standard Industrial Classification)

大分類:21部門
中分類:88分類
小分類:238分類
細分類:約420分類(国によってさらに細分化する場合もある、中国の場合は913分類)

 中国はこのすべての産業チェーンで製造ラインを持っています。さらにその規模は、スマホ・家電・太陽光・EV・鉄鋼・化学・繊維など ほぼ全ての製造業で世界最大の生産能力を持っています。

 世界の製造業輸出に占める中国のシェアは急拡大し、 中間財でも同様の傾向が確認されています。これは「世界のサプライチェーンの中間点に必ず中国が入る」構造を生みだしています。

 あらゆる種類の製品を国内だけで作ることができるということは、結果としてどういう意味をもつでしょうか?実際の具体例で見てみましょう。

1 設計図を作って新しい製品を作ろうとする場合、そのすべての部品は国内調達できます。トラック輸送で数時間以内にすべての部品が調達できます。国内でサプライチェーンが完結していなければ、必要な部品は航空輸送で外国から輸入しなければなりません。輸送費もかかります。深圳で新しいパソコンを作る場合、設計図ができれば、試作品が完成するまでに要する時間は3日です。これは「深圳スピード」と言われています。

2 他国にとっては、中国との窓口さえ堅持していれば、すべての製品が手に入ります。つまり、アメリカに経済制裁されてもその影響を回避できます。中国の周辺国は確実にその恩恵を受けています。

3 レアアースの輸出規制に見られるように、世界シェアを独占する物資をたくさん持っている結果、アメリカなどの覇権国家の武器生産そのものに打撃を与えています。

 戦闘機、ミサイル、誘導装置などはレアアースの塊で、大量のレアアースなしには作れません。アメリカは戦略的に数年分のレアアースの備蓄を持っていますが、備蓄が底をつくまでに数百兆円を投じて代替の生産ラインを作ろうとしています。ただ、中国のように安価にレアアースを精錬するのは10年後でもほぼ不可能です。レアアースの精錬は非常に難易度が高く、中国の精錬技術は1950年代から研究され確立されてきた技術で、他の追随を許さないといわれています。

4、他にも、銅やアルミの地金生産の世界シェアは銅が50%、アルミが61%です。EVやAIデータセンター、送電網の建設には不可欠の物質です。もし欧米がレアアースを中国以外から代替できるようになったとしても、中国は他にもたくさんの重要な資源の生産国です。アルミは20年前は世界シェア10%でした。それをわずか20年で世界シェア61%まで激増させたのです。さらに中国はこうしたすべての原材料生産で、シェアが巨大なだけでなく、圧倒的な価格力を持っています。

世界最大の製造業付加価値

「製造業付加価値」とは、製造業が生み出した純粋な価値の総量であり、 サプライチェーンの厚み・技術力・産業集積を測る最重要指標です。

OECD TiVA(Trade in Value Added)によれば、
中国の製造業付加価値は
1995年 → 2020年で 約18.5倍 に拡大し、
EU全体の1.6倍、米国の1.8倍 に達しています。
これは「世界で唯一の製造業超大国」と形容される根拠です。

🌏主要国の製造業付加価値(2023年、百万USD)
(出典:国連FAO統計)

順位 国名 製造業付加価値
(百万USD)
特徴
1位 中国 4,781,179 世界最大。      米国の約1.7倍
日本約5.7倍
2位 アメリカ 2,840,447 航空機・医薬・半導体など高付加価値中心
3位 日本 842,797 精密機械・化学・自動車が中心。
4位 ドイツ 838,894 機械・自動車の高付加価値。
5位 韓国 470,928 電子・半導体・造船。
6位 インド 462,443 急成長だがまだ中国の10/1。
7位 メキシコ 365,491 対米向け製造拠点。
8位 イタリア 353,622 中小製造業の集積。
9位 フランス 296,997 航空機・化学。
10位 ブラジル 290,394 資源系製造業が中心。

 

GDP(国内総生産)という指標で見ると、

3か国GDP比較(USD換算)

名目GDP
 (USD)
実質GDP 
(USD)
元データ
� 日本 4.19兆ドル 3.68兆ドル 内閣府2026Q13
�米国 31.82兆ドル 24.15兆ドル BEA2026Q1
�中国 20.66兆ドル 19.82兆ドル 中国NBS/IMF2025


 

実質GDPで見ると、すでに中国はアメリカの82%まで緊迫しています。

産業区分 アメリカ
(2025年)
中国
(2025年)
日本
(2024年)
第1次産業 0.8% 6.8% 1%
第2次産業 16.4% 36.5% 29%
第3次産業 82.8% 57.7% 70%



アメリカのGDPの82%は第三次産業です。第三次産業には、商業、不動産、金融、国防、警察、消防、医療、教育などが含まれます。GDPという指標は国の経済力を測る指標にはなりえません。

 

・・・ここで少し道草 

 インドは何で製造業付加価値が中国の1/10しかないのか?

 インドが独立したのは1947年、新しい国造りを始めたのは中国とほぼ同じ時期。インドと中国の人口は現在ほぼ同じ。国土面積は中国の方が広いが、農業ができて人が居住可能な土地の面積はインドの方が広い。インド洋にも面し、地理的にはインドの方が産業を発展させるのに有利な条件が備わっているように思える。なのに、何故発展速度がこんなに違うのか?

 中国は建国当初からアメリカはじめ先進国から厳しい経済制裁を受けた。それとは反対に、インドは独立当初から欧米から手厚い経済援助を受けた。

 帝国主義国からの援助が発展の足かせになったのか?


2、「自力更生」は中国の平和的な経済発展モデルの出発

 中国人民は、1840年のアヘン戦争以来、欧米や日本からの侵略、植民地支配を受けた100年以上に及ぶ苦難の歴史を経て1949年中華人民共和国を建国しました。

 しかし建国以降も決して平たんな道のりではありませんでした。アメリカは1949年ココム(COCOM・対共産圏輸出統制委員会)、1952年チンコム(CHINCOM・対中国輸出統制委員会)を設立し、共産圏とりわけ新中国への経済封鎖を行いました。日本軍国主義が略奪と破壊の限りを尽し、まったくの廃墟から出発するしかなかった新中国を待ち受けていたのは、欧米、日本などからの経済封鎖というあまりにも過酷な仕打ちでした。

 「自力更生と刻苦奮闘」で経済建設を行った1950年代60年代には、「工業は大慶に学べ」「大慶油田の英雄・王進喜が泥水の中に飛び込んで体でセメントを撹拌した話」などが語られ、多くの都会の知識青年が地方の農村に移り住んで農民と共に汗を流しました。この「下放」運動は都市と農村の矛盾を解決する上で一定の成果があったものの、文革期後半にはこれが懲罰的に運用され、大きな混乱を招いたのも事実のようです。現在は当時の誤りをしっかり総括しています。

 習近平氏自身、父親の習仲勳氏(元副首相)が政治的に失脚㊟したため1969年、15歳の時から1975年22歳までの7年間、陝西省延安市の梁家河という辺境の村に送られ、ヤオトンと呼ばれる山肌に掘った横穴式住居でノミやダニに悩まされながら地元の農民たちと寝食を共にして土木工事を行い、メタンガス発電設備開発を主導するなど「自力更生、刻苦奮闘」の生活を送りました。数か月間、一切れの肉も口にできない貧しい生活だったと言われています。1974年、21歳の時にこの村で中国共産党に入党し、村の党支部書記(トップ)に抜擢されました。

(㊟ 習仲勳氏は1978年になって、過去の失脚のいきさつが謀略事件だったとして名誉回復され、広東省の省長になり、深圳経済特区を作りました。2002年88歳で没。習近平氏の母親斉心さんは今も深圳で静かに余生を送っています。今年11月に100歳。)

 現在は文革期のような「下放」は行われていませんが、今も「貧困撲滅政策」の中で、多くの共産党員や公務員が貧困な地方に出向して活動しています。

 貧困対策は日本では失業対策や生活保護に矮小化され「社会的な負荷」としか考えられていません。それと対照的に中国では「貧困撲滅」を社会経済発展のための新しいフロンティアとしてとらえています。ここが日本の「貧困対策」と根本的に異なる点です。

 中国では「人に魚を与えるのは、漁の仕方を教えることには及ばない」という諺がよく使われますが、そこには、新しい価値を創造することによって貧困から脱出し、それを国力に変えようという思想があります。

 それは中国という国自身が経験してきた歴史そのものとも言えます。そのためには知識人が深く労働者農民と結びつき、個々具体的な課題を調査研究し、お互いに協力して解決策を見つけだすことが不可欠と考えられています。

3、「貧困撲滅」を実現する上で大きな力になっているのが
 「eコマース」と「ライブコマース」です。

 「eコマース」はインターネット上で商品を売買する仕組みのことですが、その一つの形式である「ライブコマース」は、ライブ配信(生放送)をしながら商品を紹介し、その場で購入してもらう販売方式です。 配信者が実演し、視聴者がコメントで質問し、ワンクリックで購入でき、数日で配送されます。

 この普及によって、貧困から脱却した村が多数生まれました。淘宝村(タオバオソン)や淘宝鎮(タオバオジェン)では、単に農業生産が増えただけではなく、オンライン販売を軸に包装・物流・加工業などの軽工業が出現し、農民の所得が大幅に向上しまた。

 抖音(ドウイン)や快手(クアイショウ)のライブ配信では、雲南のキノコ、貴州の唐辛子、陝西のリンゴなど、地域特産品が全国へ直接販売され、農家自身が販売者となることで利益率が改善しました。

 日本のように大手通販サイトが介入して中間マージンを搾るシステムとは根本的に違います。

中国では中間マージンを最小化し、生産者と消費者を直接結びつけることによって、生産者の利益を最大化するシステムになっています。

 中国政府の「電商扶貧」(diàn shāng fú pín)政策は、2014年以降、貧困削減の公式手段として制度化されたものです。

 日本のようにいくつかの企業に補助金を出して委託するというやり方ではなく、中国政府がその全過程を指導し援助します。制度設計からインフラ整備、教育、金融、結果の評価まで、すべてに責任を持って行います。

 村レベルまで宅配網を整備(全村配達)し、コールドチェーン(冷蔵物流)を整備し、4G/5Gの農村普及、地域特産品のブランド化、加工業の育成、淘宝村・淘宝鎮の育成、ライブ配信研修、電商学院(EC専門学校)の設置、EC店舗向けの無担保融資、農産物の先物買取制度、などなど。

 急ピッチで進む高速道路網、鉄道網、低空経済(ドローン配送・エアタクシー・無人航空機物流など)など交通インフラの整備は、こうした急激に増加する物流の需要に応えるためのものです。

 

4、中国はまた、地球環境や生態系の保護と貧困撲滅を結び付けています。

 中国は2013〜2020年の「精準扶貧」(jīng zhǔn fú pín)期間 ㊟ に、生態保護を担う仕事を貧困層に提供する政策を大規模に展開しました。

 その中には、森林監視員(護林員)、草原・湿地保護員、砂漠化防止作業員(植樹、草方格設置、灌漑管理など)、生態修復プロジェクトの臨時雇用などが含まれます。

 砂漠緑化はまさにこの枠組みに入ります。

㊟「精準扶貧」

「精准扶贫」は、 “誰を、どのように、どの政策で支援するかを精密に特定する” という中国の貧困削減政策の核心的概念です。

2013〜2020年の貧困撲滅戦の中心思想で、精準識別(誰が貧困かを特定)し、精準施策(どの政策を当てるか)を検討し、精準管理(データ管理)し、精準評価(第三者による成果の評価)までを含む体系です。つまり、本当に貧困から脱出できたかどうか?その結果に行政が責任を持つ体系を組み立てているのです。日本のように「お金をばらまいてハイ終わり」 すぐにインフレになって元の木阿弥、でも行政は知らん顔、ではないのです。

甘粛省「八歩沙モデル」

 


 砂漠化防止の最前線である甘粛省八歩沙林場では、世代を超えて砂漠緑化に従事する住民が地域の雇用と収入を支えていると報じられています。 植林・草方格(藁を碁盤目状に敷く技術)・灌漑管理などの作業が住民の仕事となり、地域経済の基盤になっています。

 

寧夏・闽宁(ミンニン)鎮モデル

 

 寧夏回族自治区の闽宁(ミンニン)鎮は、福建省と寧夏の対口支援(ペア支援)によって誕生した移民定住区で、 中国の貧困扶貧政策の象徴的成功例として知られています。かつて砂漠だった地域が、植林・土壌改良・エコ産業の育成によって貧困から脱却した成功例として紹介されています。 砂漠化した土地の植林や生態回復作業が、住民の雇用創出に直結しています。植樹(苗木の植え付け)、藁わらを碁盤目状に埋め込み、砂の移動を止める 草方ツァオ・ファン格・グァ(藁を使った砂固定技術)の設置、灌漑設備の管理(太陽光発電による点滴灌漑など)、苗木の維持管理(補植、除草、保護)、砂丘の移動監視・生態モニタリング、これらは国家が資金を投入して雇用を創出する「生態補償」政策の一部として機能しています。

国家戦略としての「緑の長城」

 中国の「三北防護林(緑の長城)」は1978年から続く国家プロジェクトで、2050年完成予定の世界最大級の超長期植林計画です。

 三北=東北・華北・西北(中国北方の乾燥地帯)は黄砂や砂嵐、土壌流出、農地荒廃が広範囲に発生していました。そこで中国政府は「北方に巨大な森林の壁を作り、砂漠の南下を止める」 という国家戦略を立てたのです。この計画では、砂漠化防止、生態回復、農村の雇用創出 を同時に目的としています。

 

 近年は、太陽光発電施設と植生回復の組み合わせ、デジタル監視や地域住民の長期雇用 が進み、砂漠地帯での雇用が安定化しています。

 生態保護員(生态护林员)は、中央財政の補助金で雇用される「公益性の仕事」ですが、フルタイム雇用ではなく、農牧民の副収入として位置づけられています。勤務時間は柔軟で月数回〜週数回程度です。農繁期は農業を優先してよく、農閑期に巡護・植樹・草方格作業をするようにしています。収入は年間8,000〜12,000元(16万円~24万円)程度の「補助的所得」ですが、これは生活の大きな糧になっています。 

 

5、「不動産不況」からのパラダイム転換

そもそもなぜ今の不動産不況が起きたのか?その歴史的原因について見てみます。


 2008年のリーマンショック(世界金融危機)の際、中国が世界経済を大不況のどん底から救い出す決定打となったのは、「4兆元(当時の日本円で約57兆円)の超大型経済対策」です。

当時、主要国が利下げや財政出動に苦慮する中、中国は他国を圧倒するスピードと規模で巨額の資金を市場に投入しました。これが世界経済の「底割れ」を防ぐ強力なエンジンとなりました。

 中国政府は、国内の景気後退を防ぎ、高い経済成長率(当時は8%維持が絶対目標でした)を死守するために、主に以下の分野に資金を集中させました。

 「大規模なインフラ投資」 4兆元の多くが、高速鉄道、高速道路、空港、ダム、電力網などの国家級インフラ建設に投じられました。

 「震災復興」 2008年5月に起きた四川大地震の復興資金としても大規模に活用されました。「低所得層向け住宅の建設」 住宅不足の解消と建設需要の喚起を同時に狙いました。

 「減税と金融緩和」 企業の税負担を軽減し、銀行に対しては融資の規制を大幅に緩めて、市場にお金が回りやすくしました。

 重要なのは、中国のこの政策は、自国だけでなく世界経済をどん底から引っ張り上げる役割を果たしたことです。

 膨大なインフラを建設するためには、膨大な原材料が必要です。中国は鉄鉱石、銅、原油、石炭などの資源を世界中から買い付けたため、オーストラリアやブラジルといった資源国は不況に陥らずに済みました。また、工場で使う高性能な工作機械や部品を日本やドイツなどの先進国から大量に輸入したため、これらの国の製造業も大打撃から早期に回復することができました。

 それまで世界経済の最も大きな消費市場だったアメリカやヨーロッパが金融危機で瀕死の状態になる中、中国が身代わりに世界の「需要の受け皿」となりました。結果として、中国はリーマンショック直後の2009年でも9.4%という驚異的な実質GDP成長率を維持し、世界全体の景気を下支えしました。

 この4兆元の経済対策は世界経済を救った一方で、国内で地方政府の債務(借金)が膨れ上がったり、不動産バブルを引き起こしたり、過剰な生産設備が残ってしまうという、現在の中国経済にも続く大きな副作用を生むきっかけにもなりました。

 中国はこの経験を総括し、「不動産依存モデルの終焉」を前提に、新しい戦略を描いています。

 現在、中国の中小都市には数千万戸規模の在庫があると推計されています。これを政府や国有企業が買い取り、公的な住宅として再利用しようとしています。これは一時的なものではなく、都市の家賃負担を引き下げ、住宅を市場に任せるのではなく、保障性住宅(公的賃貸)中心へと歴史的な転換を進めているところです。

 「住宅は人が住む所であって、投機の対象ではない」、住宅を社会共有の「インフラ」とするパラダイム転換を目指しているのです。ピンチをチャンスに変える発想ですが、日本のような資本主義国にはちょっとマネのできない政策です。

 そしてより重要なのは、政府が守ろうとしているのは不動産ディベロッパーの利益ではなく、住民の生活だということです。

6、全国人民代表大会では何をするのか?

 私たちのイメージでは、中央委員が雛壇に座っていて、真ん中で習近平さんが演説している、一般席でそれを(全人代)の代表が聞いている、そんな場面しか思い浮かびません。実際には何をしているのでしょうか?

 本会議ではたしかに政府の報告を聞くだけですが、3000人以下(およそ2980人ほど)の代表がそれぞれ地方で練り上げてきた議題を持ち寄ります。年間およそ200~300の「議案(公式の法案など)」と7000~8000の「提言(意見や要望)」が集まります。それらはすべて分科会で討議し、解決策を示すことが義務付けられています。

 提出された「議案」はまず主席団に送られ、討議する価値があると認められたものは各専門委員会に送られ、数カ月から1年以上かけて調査、修正され、常務委員会(170人)で審議・採決されます。

 7000~8000の「提言」に対しては、1週間以内に処理のプロセスが示され、通常3カ月以内、遅くとも6カ月以内に回答があります。70~80%の提言に対しては具体的な解決策が示され、15~20%は「計画に入れて進める」という回答になります。「今の国の財政状況では難しい」「時期尚早である」として見送られるものは5%未満ということです。

 回答は6カ月以内に代表本人に直接行うことが法律で決められており、これは鉄のルールになっています。またそれぞれの提言が今どの委員会で討議されているかということは、常時ネットで監視することができます。

 中国には民意を聞くために多様なシステムが存在します。中国政府ネットには「我向総理说句话(総理に一言)」という公式窓口があり、 国民の意見を総理府に直接送れる制度も存在します。 政府は「すべての意見を真剣に扱う」と明記しています。政府が策定する五カ年計画などの国家政策についてもオンラインで意見を募集します。2020年の第14次五カ年計画では、 オンラインで100万件の意見が集まり、その一部が実際に政策文書に採用されました。( 例:農村高齢者の相互扶助モデルなど)

 日本のように、4年に1回、活動の実績も能力もわからない人物に、選挙時の宣伝文句を聞いただけで白紙委任する「民主主義」とは大違いです。私たちの民意は、選挙の時以外の4年間は遮断されてしまうのが日本の「民主主義」です。

 中国では違います。人民の要求は今どこにあるのか?どこにどういう需要があるのか?そこに常にアンテナを立てている政府があるからこそ、中国では人民の一人一人が、国家の主人公としてその政治的権利を行使できるのです。

 今回はこの程度にしますが、これからも様々な角度から、中国の平和発展モデルについて、

「日中友好ひろば」や「日中友好ネット」などで発信していきます。

真実の中国を知るために、
「人民中国」の定期購読を!