日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№7

 大統領選挙に注目が集まっている中、アメリカ議会(衆院)では、集中的に反中国法案の提案と審議が行われています。アメリカのマスコミは、この一週間を「中国ウィーク」とさえ称しています。アメリカ議会は6週間に及ぶ夏期休会期を終えたばかり、その週明けに一気に少なくとも25項目に及ぶ「反中国」議案が提出されました。おまけに審議を抜きにいきなり評決する始末です。なぜそれ程までに慌てているのでしょうか?その実、この一週間だけで、十数件の法案を通過させています。

 「生物科学企業との往来禁止」や「特定企業の通信施設の排除」等など、法案内容にそれ程の“新味”はないので略します。何しろこれまでに“反中国”に関する法案や行政命令だけで1000件近くもあるのですから・・・。一つだけ面白い例に挙げると、「特定企業の無人機の排除法案」と言うのがあります。標的は「大疆」の無人機(ドローン)です。 「大疆」の民用無人機は世界シェアの70%以上に達しています。アメリカでは既に何年も前から、使用禁止範囲を徐々に拡大していますが、それでも政府機関でさえ使用し続けています。かつては軍関係でも使用され、今なお50%のシェアを占めているそうです。アメリカ政府にとっては確かに“冷や汗もの!”でしょう。今回の法案では全面禁止を謳っていますが、さっそく農民や消防・救助機関が大反対しています。安価で高品質な大疆無人機に代替がないのが現実です。

 ご存じの方も多いと思いますが、アメリカは法案や行政命令を作るのが“大好き国家”です。実効性のないもの、相互矛盾するものなど、お構いなしに提案、立法化します。議員たちの能力(?)を示すパフォーマンスの一つになっているからです。その“効果”はあったのでしょうか?

 その典型は2018年からトランプが発動した対中国「貿易戦争」です。「中国製品」に対し片っ端から高関税をかける法案を作りましたが、結局、回り回ってこの高関税の90%以上が、アメリカの業者や消費者に転換され、インフレを引き起こす大きな要因の一つになっています。にも関わらず、日本でも一部報じられているように、性懲りもなく、最近では中国の「電動自動車」に対し「100%!」の関税を課すことを既に決定し、各国にも追随するよう圧力をかけています。今のところ唯一カナダだけが追随しています。EUも追随する意向を示していますが、課税率は30%代です。それでも加盟各国から大反発をくらい、税率を徐々に引き下げざる得ない状況です。因みに面白いのは、アメリカはもとより中国からの電動自動車輸入を実質的に禁じており、これまで市場にはまったく出回っていないにも関わらずです!?

 “追いつかれそう”になった「二番手」に対し、正当に競争する努力と改革を放棄し、相手を攻撃することで乗り切ろうとするアメリカの姿勢は一貫しています。ソ連や中国と言った“敵国”に限らず、同盟国に対しても同じ手法を用いています。

 かつてGDPでアメリカの70%近くまで迫った日本に対し、「プラダ合意」を迫って徹底的に叩き潰した事案がその典型と言えるでしょう。日本はその後「失われた20年(今や30年)」を経験し、二度と立ち上がれなくなった記憶はまだ新しいでしょう。

 さて、アメリカの“半植民地”状態にある日本とは違い、この「手法」は中国に対し有効でしょうか?もちろん「否」です。

 アメリカによる“中国封じ込め”は既に遅すぎたようです。
 中国は今や世界で唯一、国際連合の国際標準産業分類の全ての工業分類を擁する国となっており、2010年に中国は製造業生産額が米国を抜いて世界一の製造業大国になっています。世界銀行のデータによると、世界主要工業製品約500種類のうち、約220種類は中国の生産量が世界で最も多く、加えて世界で最も「整った工業システム」を有する国となっています。現在、中国には41の工業大分類、207の工業中分類、666の工業小分類すべてにおいて、独自の整った現代型工業システムを構築し、世界で唯一、国連の国際標準産業分類の全工業分類を擁する国となっています。宇宙産業やグリーンエネルギー産業から、果ては紙マスクや使い捨てライターに至るまでのすべてです。中国が「世界の工場」と称される所以です。

 さらに、「革新(イノベーション)が駆動する発展」においても、過去の「追いつこう」とする状態から、「併走する」状態へ、さらには「追い越してリードする」状態へと前進し、発電設備、送変電設備、軌道交通設備、通信設備などの産業は今や世界のトップレベルにあります。加えて、今や中国は世界最大の「市場」となっています。

 中国は「製造業」を国の“柱”と考えています。アメリカのように“経済繁栄”を金融やサービス業という生産性のない分野に頼って、産業の「空洞化」を招くような「愚」を犯すことはないでしょう。
 今以て中国を“後れた国”と信じたい日本はなかなかこの現実を受け入れ難いのは理解できますが、これが「現実」です。

墨面 2024/9/18(「*柳条湖事件」記念日にあたって)