日本のマスコミでもその概要だけは報じられましたが、11月14日、南米ペルーのチャンカイ港(銭凱港)が開港しました。中国が60%出資する、南米最大の、大型コンテナ船が着岸できる完全自動化された最新鋭港です。これまでの南米~アジア間で30日以上を要していた航路を約23日間に短縮するものです。
因みに、このチャンカイ港の開港は、中国が推進する「一帯一路」の一環であると同時に、その“はじまり”に過ぎません。この港を起点に、南米各国を網羅するように、内陸部に向けた鉄道網が建設される予定です。
この開港によって、ペルーに膨大な就業機会と年間約45億ドル(7000億円)の収入をもたらすばかりか、それを上回る経済効果が内陸部に波及すると期待されています。こうした経済効果はこれまで混迷を続けていた南米各国に社会的安定をもたらすことになります。
これまでアメリカは南米を自らの「裏庭」と見なしてきました。キューバやベネゼイラなどを例に挙げるまでもなく、これまでもアメリカは「経済制裁」などによって経済発展を阻害するばかりか、露骨に内政に干渉し、不都合な政権を転覆、果ては指導者の“暗殺”を繰り返してきました。
もとより、南米各国とアメリカの輸出品目は重複(「競合関係」)し、方やアジアとの貿易品目は相互「補完関係」にあり、その前途は有望視されています。ただこれまでは貧しさからインフラ整備が遅れ、この有利な条件を発揮できずにいただけです。今回の開港によって南米各国の豊富な農産物や鉱物が、中国は言うに及ばず、発展著しいアジア各国に向けてより安価に輸出され、ペルーをはじめ南米各国に経済にとっても、アジア各国(もちろん日本を含め)にとっても、大きな経済的利益を生むでしょう。
その効果は経済面に止まらず、アメリカと南米諸国との地勢的関係も一新させることになります。
南米をはじめ、アフリカ等、いわゆる「第三世界」を一貫して軽視するアメリカですが、こうした地域での中国進出に慌てふためき、2022年には4年ぶりに急遽「アメリカ州首脳会議」を開催しましたが、最も注目されたのは、その成果よりも、米州諸国の立場の違いと分裂でした。主催国米国が「民主?と人権?」状況を理由にキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを排除し、これに左派政権の国々が抗議し、会議そのものをボイコットする国々も現れています。当然、この「政治ショー」は何ら具体的成果も無いまま閉幕しています。
本通信の「№5」でご紹介した2024年の「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)北京サミット」と併せ、今回のチャンカイ港の開港から、中国が提唱する「人類運命共同体」と「一帯一路」構想の真髄が見て取れるでしょう。こうした事態に、相も変わらず「債務の罠」「過剰生産」「軍事利用の恐れ」・・・と言った「ネガティブキャンペーン」を繰り返すだけで、何ら有効な手立てを示せない「G7」を中心とする「欧米+ポチ」の、侵略と植民支配による「既得権」は、周辺部から徐々に、そして確実に“浸食”されはじめています。
これこそが明確なグローバル世界の趨勢と潮流と言えるでしょう。アメリカにおける「トランプ」の登場は決して“偶然”ではなく、むしろ“必然”と言えます。お気づきかも知れませんが、その数ヶ月の間に幾つかの出来事(または“趨勢”)がありました。長らく中国と印度の間にあった国境紛争に一応の「合意」が成立し、ドイツをはじめヨーロッパの幾つかの国々が積極的に中国との関係修復に求めはじめ、韓国や日本でさえ、実質的に長らく途絶えていた「対話」の再開がはじまりました。それらは今のところ、アメリカ覇権=特に「トランプ登場」に対する“保険”という意味あいに過ぎないかも知れませんが、この趨勢は確実に拡大していくことでしょう。
日本の衰退を救うのは、中国やアジアとの連携と友好を深める以外にありません。いつまでもアメリカの軍事枠組に組み込まれるだけでは、世界の趨勢から取り残されるという現実に、政財界の一部や社会がようやく気づきはじめたと言えるかも知れません。
中国ではこうした世界的変動を「百年変局」と称しています。私たちは正にその真っ只中にいます。
2024年11月18日 墨面 記