日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№17

 トランプの登場で、「関税」を武器にした各国への「ディール(取引)外交)=脅迫・略奪外交」がますますその熾烈さを深めています。中国はおろか、「自由貿易協定(*これまでは関税0%)」があるカナダとメキシコを含む「同盟国」にも向けられています。次はヨーロッパEU、更には日本や台湾なども対象にされることでしょう。
 カナダ、メキシコにしては珍しくこうした関税攻撃に対し、“強力な”「報復(関税)」を示唆しています。それも結局は建前だけに終わるでしょうが、“報復”の一字も出ず、ただ影響をどの程度“緩和”できるかという論議のみに終始する日本や、開始される前からすでに「全面降伏」を決め込む台湾等に比べればまだましな方かも知れません。
 では、中国はこの問題をどう捉えているのでしょうか?最近の中国の世論動向を私なりに整理して見ました。中国はこうしたアメリカの「関税攻撃」に対し、一連の抗議声明やWTOへの提訴を表明すると共に、わずか数分後には“限定的な?”「報復」処置を発表しました。明らかにこうした事態に対し、既に充分準備してきたことが窺えます。とは言え、全体的に見ると意外なほどクールで、“控え目”な感じがします。(*因みに、アメリカの絶対的影響下にあるWTOへの提訴に実質的な意味が無いことは中国は百も承知しています)。
 中国が“弱腰”になったのでしょうか?答えはもちろん「否」です。

 中国に対する「貿易(関税)戦争」は「トランプ1.0」の時代から、既に6年間続いています。この間に、中国はアメリカ貿易額(比率)を既に大幅に縮小させています。トランプが貿易戦争を仕掛けた2018年当時、中国の全貿易量に対する対アメリカ貿易比率は20.2%でしたが、その後、多角化を図り、今日では既に半分の10.2%まで縮小させています。その反面、アメリカの対中貿易赤字は縮小するどころか、逆に増大しています。要は、アメリカからの輸入減少、更には中国の対米輸出品目が他に“代替”の効かない商品であることと、以前と違って輸出品目がより「高付加価値」の商品になっているからに他なりません。アメリカがいくら課税しようとも、純経済的側面で言えば、中国への打撃は最小限に抑えられ、その反面、アメリカ自身がそれ以上の被害を被る構造になっていることに他なりません。中国が譲歩する必然性はほとんど無いと言えるでしょう。

 中国はこれまでの6年にわたる経験から、トランプの“土俵に乗る”ことはありません。中国がよく言うところの「你打你的、我打我的」です。つまり、「あなたはあなたの好きに闘えばいいが、私はその土俵に乗ることはなく、私なりに闘う」という意味です。
 かつて、「貿易戦争」の終結を次期政権(バイデン)の登場に期待した思惑が外れ、中国の対米戦略は明らかに転換しています。
 バイデン政権発足後、アラスカにおける最初の接触(高官会議)は衝撃的でした。初対面でいきなり高圧的に振る舞うブリンケン(元)国務長官に対し、中国の楊潔代表が:「中国はアメリカが“実力地位”から我々にもの申すことを許さず、その手に乗ることは決してない」と宣言し、会議そのものが物別れに終わっています。この一幕は日本のマスコミではまったく報じられていませんが、その後の米中関係を決定する、国際的にもとても有名なエピソードです。

 さて、話しは変わって、こうした「関税戦争」以上に興味深いのは、トランプ(+マスク)によるアメリカ国内問題での対応です。最も興味深いのは「USAID(アメリカ国際開発署)」への攻撃です。
 この海外「援助?」を建前とする「USAID」は「NED(全米民主主義基金会)」と共に、「アメリカ民主?」を輸出し、アメリカの意に沿わない各国政権の転覆を企てる、アメリカお得意の「カラー革命」の牙城です。
 アメリカの「対外援助?額」は莫大で、2023年度では720億ドルに達していますが、その内、「USAID」だけで400億ドルを獲得しています。世界中に配置された職員は各国の協力要員を除いても14000人に達する巨大組織です。トランプはこの組織を「解体」し、職員もほぼ全員解雇すると明言しています。無論、「USAID」はテンヤワンヤです。
 トランプが“善人”になって「もうカラー革命はやらない」わけではありません。その実、トランプはこの組織を「解体」した後、「改編」し、新たな組織の立ち上げを公言しています。
 ではなぜトランプは「USAID」を目の敵にするのでしょうか?答えは、この「USAID」は民主党が延々20年近くかけて築き上げた民主党の利益誘導組織であると共に、巨大な「金づる」になっていたからです。
 いつもの“大風呂敷”とは言え、マスクは「USAID」の資金の90%が不透明であると公言しています。 「海外援助?」に名を借りて、民主党の施政を実現し、その過程で莫大な「資金」が民主党関係者の懐に流れ込むという構造が出来上がっているのは紛れもない事実です。それに加えて、民主党はこの「USAID」の影響下にあるマスコミを動員して「トランプの再選阻止」を図ったことがトランプの“逆鱗に触れた”と言われています。

 「USAID」による援助停止が発表されるや、これまで散々“甘い汁”を吸っていた各国の組織や個人の“タガが外れ”、これまで隠されていた内幕の一部が徐々に外部に漏れはじめています。援助停止直後、ウクライナのゼレンスキーが「アメリカのウクライナ支援は2000億ドルと称されているが、実際は760億ドルしか受け取っていない」と公言しはじめたのもその一例です。
 また、世界で最も影響力がある報道機関の一つにイギリスの「BBC」があります。「新疆ウイグル」、「香港騒動」等、ほとんどの「反中国宣伝」の第一線を担った報道機関です。因みに日本の「反中報道」の“元ネタ”の多くもこの「BBC」です。この「BBC」がこの数日、その報道姿勢を一変させたことに世界中が驚いています。「『中国製造2025』の大成功」を称賛し、中国の「体制優位性」さえも褒め称える始末です。
因みにこの「BBC」のナンバー2の“金主”は他ならぬ「USAID」です。“金の切れ目は縁の切れ目”とはよく言ったものです。
 もう一つの例として、「USAID」が資金提供する「国境なき記者団」から数々の内情を漏れはじめています。ご存じと思いますが、この「国境なき記者団」は「チベット問題」を掲げて、各地で「北京オリンピック」を妨害する活動を行ってきた組織で、同じく「反中国宣伝」の先鋒を担ってきた団体です。
 「USAID」は世界中で無数の「NGO」を作って、活動拠点にしていますが。特にマスコミ関係への投資は顕著です。その実態の一部があきらかにされています。「USAID」が世界中で707の新聞社、279のマスコミ機関、更には6500人の記者に資金提供している他、更に多くの記者を“訓練”しています。無論、「日本」もその中に含まれます。
 因みに、ウクライナにある10のマスコミ機関の内、9つの機関がここから資金を得ているばかりか、中には運営予算の80%をここからの資金提供に頼っている機関もあります。
 言うまでもなく、特に中国は“重点対象”で、中国国内だけでもこうした「経済支援?」を受けている者が2000人いるそうです(*中国政府発表)。
 こうしたことはマスコミに限らず、「学者?」に資金提供し、アメリカの政策に沿った論文や著書を発表させたり、果てはハリウッドの“スター”を動員し、ウクライナに“慰問?”に行かせるということもしています。

 もとより、膨大な政府予算の「赤字」から派生するアメリカの“内闘”には興味がありませんが、こうした“内闘”によって漏れ出す「真実」は興味深いものです。
 「ウクライナ戦争」で明らかになったアメリカの“冷血”、身勝手な「金融政策」、更には今回の「関税」を“武器”にした理不尽な脅し、公然とカナダやグリーンランド、パナマ運河の併合を嘯くアメリカの排他性と侵略性が明らかになるにつけ、これまでそれなりに効力を発揮していたアメリカによる「マスコミ操作」と「世論操作」の実態がますます世界中の人々の前にあきらかにされ、アメリカがますます世界から孤立する日もそう遠くはないことと実感します。
                                2025/2/14  墨面 記
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