日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№21

久しぶりの「ニュース」です。ご笑覧頂ければ幸いです。


トランプによる「関税戦争」のゴタゴタもそろそろ先が見えてきました。日本を含む各国の対応もほぼ出そろった感じです。
 元は「0」の状態から、「100」の“極限要求”を吹っかけ、交渉(妥協?)で“50”を取ると言う、まったく“元手いらず”のヤクザまがいの交渉(?)を目論んだトランプの思惑は見事に破綻しつつあります。

 最大のつまずきは、中国の「強硬姿勢」です。当初、75カ国が「kiss my ass(私の尻を舐める)」為に列を成していると豪語するトランプですが、攻撃の主対象である中国の“徹底抗戦”はEUやカナダ等にとって有力な“強心剤”となり、“意外にも”かなりの抵抗を見せています。加えて、当初はすぐにでも妥協するであろうと見なされた日本や韓国などもこうした情勢を背景に、アメリカとの交渉を急がず、“様子見”或いは“引き延ばし”に転じはじめたのもこの為です。当初は日本を“お手本ケース”とする予定が狂い、やむなく標的を「印度」に向けたようですが、私が思うに、トランプより“交渉力”に長けた「印度」相手ではたぶんうまくはいかないでしょう。何よりこの75カ国に、日本を除いて、中国をはじめ、EU各国、カナダ等の、そこそこの経済力がある主要国は含まれていません。

 中国がこの「関税攻撃」にまったく動じない原因は既に本「ニュース」のバックナンバーで詳しく述べた通りですが、加えて、もう一つ重要な要素に「対外債務」と「貯蓄率」を挙げられます。2023年度におけるアメリカの債務は対GDP比は104.3%(約2362兆円)で、世界一位です。第2位の日本もそうですが、特に「コロナ禍」の時期、社会的“耐性”を強化することなく、「補助金」を乱発することで政権維持を図った「後遺症」とも言えます。こうした膨大な「債務」が経済政策の融通性を縛る“足枷”となっています。
 方や中国の対外債務はアメリカの1/3以下で、対GDP比は50.6%です。新たな経済政策を行うにあたって充分な“元手”と“余力”があることを示しています。
 加えて、「儒教思想」の影響もあり、中国の各家庭の貯蓄率は同じく世界トップの35.74%です。「浪費と借財」に慣れきったアメリカは17位です。こうした貯蓄率の高さは、危機に際し社会的な“耐性”と“強靭性”となります。
 こうした「統計数字」もさることながら、最も重要な点は、中国が“極貧”の中から侵略に抗して立ち上がった国だということです。“粟と歩兵銃”のみに頼って、世界最強と謳われたアメリカ軍に勝利した「朝鮮戦争」を例を挙げるまでもなく、中国の社会的“耐性”の強靭さをアメリカは絶対に理解できないでしょう。いわんや当時とは桁違いに発展を遂げた「現在」の中国です!アメリカ、或いはトランプの最大の「誤算」はここにあります。

 ほとんどコミックとさえ言える情景を私たちは目にしています。攻撃を仕掛けた側のアメリカでは、日用品が日々値上がりし、一部の量販店の商品棚がガラガラ状態になっています。因みに、中国の製品がアメリカの日用品に占める比率は60%、その中でも「必需品」とされる商品が占める比率は80%近くに及びます。その実、関税に影響が本格的に出るのはまだ先の6月頃だと言われているにも関わらずです。
 余談ですが、「トランプタワー」で売られているトランプ支持者愛用の「MAGA」と記された赤いキャップをはじめ、“土産品”のほぼすべてが中国製であったり、「中国商品排除」を声高に叫ぶ報道官の着衣が実は中国製だったりという笑い話がアメリカのマスコミで散々報道されています。
 本題に戻って・・・商品を運ぶ港の労働者やトラック運転手の仕事が既に激減し、中国への輸出がほぼ全面的にストップした大豆をはじめ農産・畜産物の生産農家の窮状等など、連日数十万の民衆が抗議デモに繰り出している様子は日本でも度々報じられています。その為、トランプの支持率も既に39%まで落ち込んでいます。
 方や“攻撃されている側”の中国はどうでしょう?無論中国の製造業者にとっても大きな打撃ですが、政府が“音頭を取る”までもなく、社会的に「輸出品の国内消費」潮流が起こり、消費者は無論、中間業者や流通業者が率先してこうした生産業者に対し自主的に優遇策を講じはじめています。製造業による「輸出先の多様化」努力と相まって、本来アメリカへの輸出商品の3/4は、こうした「内需(国内消費)」と「輸出先の移転」によって消化できるとされています。言うまでもなく、“社会的混乱”は微塵も見受けられません。

 「MA(America)GAアメリカを再び偉大に!」から「MC(China)GA(中国を再び偉大に!)」へ

 欧米のトップクラスの経済誌が記事に付けた表題です。「MC(China)GA」が今や欧米各メディアの“共通標識”にさえなっているようです。“反中一色”の日本のマスコミでも、“悪意の解釈”は相変わらずとは言え、その趣旨はこの線に沿った報道がなされています。
 トランプの「関税攻撃」以降、これまでアメリカの妨害で停滞し続けていた日韓中の貿易協定や、EUと中国の貿易促進協定などの協議が着実に進み、習近平のアジア訪問ではベトナムをはじめ各国と数十に及ぶ貿易協定が結ばれています。つい数日前(5/6)には、中国とEUが同時に互いの経済制裁令の解除に合意すると発表。凍結されていた「中欧全面投資協定」に関する協議再開がはじまります。また、同時期、東アジアの中韓日3カ国を含む、ASEAN13カ国の財政部長会議がイタリアで開かれ、アメリカを名指しして保護主義に反対する共同声明を発表しています。これまでこうした例はほぼ無かったことでしょう。
 トランプの「高関税攻撃」に対し、アメリカに次ぐ(*実態としてはほぼ同格)市場を有する中国との経済的結びつきを求めるのは“必然”と言えるでしょう。
 以前にも紹介したように、唯一中国だけがトランプの攻撃に対し、早くから既に万全の準備を整え、全面的な反撃を行っています。深刻な表情を浮かべる欧米各国のメディアのインタビューに答える中国の経済学者や政府関係者のにこやかな表情が対照的です。
 中国の姿勢は一貫しています:中国は事を荒立てたくはないが、恣意的に中国の国益を攻撃するつもりなら、我々は「奉陪到底(*最後までお付き合いする)」というものです。加えて、中国の戦略思考=「你打你的 我打我的(*あなたはあなたの好きなように闘えばいい、私はその土俵に乗ることはなく、私なりに闘う)」を見事に体現する状況が生まれています。
 中国はトランプの「関税戦争」に対し、的確な反撃を行いつつ、この機会を最大限利用し、友好国は無論、これまでの敵対国(*アメリカの同盟国)との関係改善に図り、中国の影響力を高めると共に、国連を中心とする「国際合意」と「国際規範」を守る旗頭の役割を担いはじめています。

 実際、中国ではトランプの“人気”は抜群です!中国の民間では「川建国」ということばが流行しています。「川」の“音”はトランプのことで、「建国」は中国をもり立てるという意味合いでしょうか・・・。 トランプのやること成すことが中国にとって有利に働いているという現状を表した“皮肉”です。
 「国難」を「国益」に転化させるという中国の政治力をまざまざと見せつけるものと言えます。これまでアメリカが築いてきた「ドル覇権」「金融覇権」のみに頼った、トランプによる軽薄無知な「関税攻撃」は必ず失敗するばかりか、この「覇権」という“元手”さえ失いはじめることでしょう。
 多極化する世界の中、今こそアメリカにベッタリと追随する姿勢から、中国をはじめアジアとの関係を築くことが日本の“国益”となるはずです。アメリカの“駒”となって、日本を侵略基地化しながら、戦争準備に勤しむ愚行に未来はありません。
       (2025/5/9  墨面記)