日本のマスコミでも報道されましたが、台湾の中央選挙委員会は20日、最大野党・国民党の立法委員(国会議員)24人を対象としたリコール(解職請求)投票を7月26日に実施すると発表しました。
頼清徳総統は就任から1年、立法院は国民党と第2野党の台湾民衆党が過半数を占めており、「ねじれ」議会となっています。かつての韓国・尹政権と同じ構造です。解職成立後の補欠選挙で民進党が6議席を上積みすれば、民進党が過半数となり、この“ねじれ”を解消することができるわけです。いわば“合法的な”クーデターといえるでしょう。
民進党・賴政権の焦り
本「ニュース№12」でご紹介した通り、民進党が韓国・尹政権の「戒厳令発布」騒ぎで、おそらく世界で唯一実質的に“支持”を表明したのも何ら不思議ではないのです。このリコール理由と尹政権の「戒厳令発布」理由はほとんど同じです。詳細は省きますが、要は“親中国”“利敵行為”・・・等々です。
賴政権発足後、両岸の民衆交流への妨害と攻撃や、サイバー集団を使った親中国報道の遮断とネガティブ報道の拡散等々、凄まじい勢いで続いています。そして今回の「リコール攻撃」です。
民進党の焦りは「トランプ」の登場によって加速されたものです。民進党は「アメリカ情勢」を完全に見誤り、アメリカ「民主党」一辺倒の姿勢をとったことに起因しています。トランプが最も忌み嫌う「ペロシ(元下院議長)」や「ポンペオ(元国務長官)」等々との“蜜月ぶり”を演出し、大統領選挙では全面的に「民主党」を支持、支援しました。
トランプの“個性”を考えれば、これは致命的と言えるでしょう。トランプが対中国戦略において、「台湾=民進党政権」を“捨て駒”にするのではないかと戦々恐々になるのも当然かも知れません。
「你打你的 我打我的」(あなたはあなたのやり方でやればいいが、私は私のやり方でやる)
無論、中国の「対台湾政策」はこうした“小情勢”に左右されることはありません。如何なる“屁理屈”を並べようと、いわゆる「台湾問題」は中国の「内政問題」であり、本質的それは「“未完”の植民地解放」であり、「国共内戦の終結」であることは国連をはじめ、国際社会で公的に認知された事実です。
中国が台湾解放に際し、建前として「武力統一」を放棄しないのは、国家主権という立場から言えば当然のことです。但し、“常識”から考えてもその可能性はほとんどありません。その「必要性」がないのです。「武力統一」は、台湾当局が「独立(=本質的には他国の“傀儡化”)」を宣言するか、アメリカが直接的な軍事介入する以外にはありません。
台湾経済の現状
好調に見える台湾経済(貿易立国)の状況ですが、台湾当局発表の統計数字によると 2020年台湾の貿易黒字は587.9億ドルです。同年、台湾の大陸に対する貿易黒字は866.7億ドル(その内、半導体輸入は735億ドル)です。台湾経済における「半導体=TSMC」の重要性は際立っています(*本「ニュース№20」参照)
つまり、台湾の大陸以外の国々に対しては実は「148億ドルの赤字」なのです。台湾経済は完全に中国依存しています。これは中国の台湾に対する極めて好意的な「優遇政策」によるものです。
台湾本来の“赤字体質”も当然で、もとより資源の少ない台湾の経済を支えるエネルギー資源や工業原材料等々に至るまで、ほぼすべてを輸入に頼っています。台湾はこうした物資の“枯渇”に一ヶ月も持ち堪えられないでしょう。
最近、頻繁に行われるようになった中国の「軍事演習」の“対象”は、米・日の軍事介入を阻止することと共に、台湾の主要港を目標にしているのもその為です。
無論中国にとって、「台湾同胞」をも苦しめることになる、こうした「経済封鎖」を決して“上策”と考えているわけではありません。民間交流を重ねながら、平和裏に両岸が統一することが「上策」であることは言うに及びません。今後、中国の更なる発展と、アメリカ覇権の衰退がその条件を作り出すことになるでしょう。無論それは「無期限」ではないでしょうが、中国に焦る理由はありません。
「植民地解放」「民族統一」を闘う人々を、背後からナイフを突き刺そうとする者たち
こと「台湾問題」になると、日本の“リベラル”と称される方々の“無自覚の善意(悪意!)”には、正直「嫌悪感」さえ覚えます。「反戦・平和運動」にあって、往々にして見られることですが、敵を前に果敢に闘う人々の背後から、“善意の仮面”をかぶって、その背後からナイフを突き刺す「輩(やから)」がなんと多いことか!こうした輩は決してその闘いの渦中に身を置くことはなく、「運動」の“不充分性”をあげつらいながら攻撃する。こうした輩に限って“自分は当事者(被害者)に寄り添っている・・・”と吹聴します。私も多少関わった「中国人強制連行・花岡闘争」においても、いわゆる「和解反対派」はその典型と言えるでしょう。
日本の植民地下や蒋介石独裁政権下、台湾の解放と祖国の統一を願って犠牲になった無数の「台湾民衆」の存在を歴史から抹殺し、その実、本質的には日本植民地「皇民化」の“遺毒”によって育まれた台湾“民衆”の「親日=“独立”意識」をことさら強調し、こうした“民衆”に寄り添うと嘯く・・・
こうした意識こそが、「台湾有事は日本有事」という妄言と、それに対応する琉球弧、さらには日本全土の軍事化を容認する日本の社会基盤になっているばかりか、中国(台湾を含む)民衆の「解放と統一」を阻害する役割を果たしていることに気づくべきではないでしょうか?!
墨面 記 「6.30花岡蜂起」に先だって(2025/6/25)