日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№25

 今回は「希少鉱物(レアメタル)」についてです。レアメタルについての科学的組成や、現代産業における決定的な重要性、また、その採掘や精錬、製品化における中国の絶対的優位性については、既にマスコミでもかなり報じられているの今回は触れません。別の角度からこの問題を見ていきたいと思います。

 実用的価値を考えれば、レアメタルの価値は、「黄金」を遙かに超えていると言えるでしょう。にも関わらず、これまで極めて「安価」に取引されていました。何故かというと、一つは、先端科学を牛耳る「先進国」の使用度が高く、いわゆる“価格決定権”で先進国が圧倒的に優位にあるからです。いわば、「りんご一つ」の値段は、これを売る「青果店」が決めるのではなく、「買い手」が“○○円にしろ”と決めるという“逆転現象”が続いていました。「覇権」を握るアメリカをはじめとする「先進国(=帝国主義)」の“特権”です。
 レアメタルに限らず、第3世界の産物は、ほぼすべてのこうして「搾取」されます。典型的なのは「石油」です。かつて、石油価格は産油国ではなく、「採掘技術」は無論、流通や金融を握る「先進国」主導で決められていました。こうした“覇権と搾取”に抵抗するために産油国が団結し「OPEC(石油輸出機構)」を立ち上げたのです。無論、アメリカをはじめとする「先進国」は、“切り崩し”と“無力化”をはじめます。「中東」での混乱と敵対を作り出す“要”となるのが「イスラエル」です。アメリカをはじめとする「先進国」がイスラエルを全力で扶養するのはその為です。ついでに言うと、いわゆる「アラブの春」という“動乱=フラワー革命”を画策したのもその為です。
 「OPEC」以外にも、「先進国」による石油支配に抵抗し、「国有化」を図ろうとする動きも起こります。「シリア」「イラク(フセイン)」、「リビア(カダフィー)」そして「イラン」等です。お気づきでしょう、すべて「反独裁」「民主」「人権」・・・という“錦の旗”を掲げて、アメリカ(+先進国)が近年戦争を仕掛けた国々です!「ハリス元副大統領」でしたか、公の場で「アメリカの戦争はとどのつまり“石油利権”を守る戦争でした」と発言しています。

 相手が“中国”となると、レアメタルに関しては状況は少々違います。その最たる手段は「盗掘」と「密輸」でした。つい数年前まで、推定で中国のレアメタルの海外流出量の「40%以上!」が、こうした違法な手段で流出していました。
 「先進国」資本が、生産地の一部の悪徳企業や地方政府の腐敗役人を買収、結託し、こうした輩による無計画、無規則な乱採掘などによって、「価格低下」は無論、極めて重大な環境破壊=汚染が蔓延し、一帯に十数カ所を越える「癌村」が生まれています。そして抗議する住民を地方の悪徳役人が武力で押さえるという事態が度々発生しています。その代償の先に、「“安価な”製品」が途切れることなく日本やアメリカを含む「先進国」に流れ続けたのです。
 こうした事態に中国(中央)政府が対策に乗り出します。無数にあった零細業者を6つの企業に集約すると共に、採掘、精錬、製品化を国家の管理下に置き、「違法な輸出」を阻止すると共に、「環境負荷=高汚染」を克服する技術革新に全力を傾けます。こうした試みは現在も続いています。つい先日も大規模な「密輸」を企てた業者の摘発があったことが報じられています。
 「トランプによる関税攻撃」のお陰か、中国で最近、こうした資源の管理における「追跡システム」を完成させたという情報が伝えられています。今後、これまでのような「密輸」は無論、軍事目的への「転用」はますます困難になることでしょう。

 15年(2010年)前、「尖閣における漁船追突事件」を発端に、中国の日本への「レアメタル禁輸」がありました。
 その中から中国は“相矛盾”する二つの教訓を得たようです。日本はこの禁輸処置に対し、これまでの“密輸”に加え、輸入先の“多様化”や「都市鉱山(*産業廃棄物からの再抽出)」、さらには限定的とは言え「技術革新」によって“代替品”を模索等々でこの危機を乗り切ろうとしました。
 その結果、これまでの依存度90%を60%にまで縮小したと言われています。
 この「90%→60%」をどう見るかという点で意見が分かれるところでしょう。ある程度の「代替」が可能であると同時に、15年もかかって「30%」しか減少できない上に、数倍に及ぶ“コスト上昇”によって製品競争力を低下させると言う副作用もあります。ついでに言うと、その後日本はアメリカ等と共同で「WTO」に提訴し、最終的に中国が敗訴しています。

 中国もこの“日本体験”から多くの教訓を得ています。レアメタルをめぐる中国の「位置」はこの上なく“優位”ではあっても、まだ「絶対的」とは言えません。いくら優位な位置にあっても、今後とも、中国が「レアメタル」を武器に他国(アメリカも含めて)に対し、絶対的な「禁輸」をすることはありません。
 これは“極限的に追い詰めれば必ず反動がある(=窮鼠猫を咬む?)”という、中国の“哲学”であると同時に、現実的な“選択”です。その逆を行くのがアメリカで、今まさに中国に対しやっていることです。中国に対し「半導体規制」を極限まで行ったために、中国は“やむなく”不採算であっても、莫大な資金を投じて、次々と“関門”を突破しています。そうせざる得ないとも言えます。「宇宙開発」や「AI」、「先端兵器」等々、その前例を一々列挙する必要もないでしょう。
 今回の「米中関税交渉」で、中国はアメリカへのレアメタル「管理規制」を緩めました。アメリカを“崖っぷち”まで追い詰めない中国の“智恵”です。軍事を含む中国の安全保障に関わる分野では一切妥協せず、中国にとって脅威にならない「自動車産業三社」に対してのみに規制緩和(*6ヶ月のみに限定)したのもその証です。もとより中国にとっては強力な“切り札”ではあっても、「レアメタル」を売るのは中国にとっても、“商売”として当然必要なことなのです。「全面禁輸」をするはずはありません・・・。

                                2025/7/2    墨面 記