日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№26

断片的とは言え、「台湾」をめぐる幾つかのニュースが日本の新聞等でも報じられています。それらは賴清徳政権(民進党)にとって厳しいものばかりです。(*一部本ニュース「既刊号」と重複します)

1、7月26日、台湾最大野党である「国民党」立法委員(国会議員)24人に対するリコール(解職請求)投票で、リコール成立「0」という大敗を喫しました。
 このリコールは国民投票に関わる法律の不備を利用して強行されたものです。詳細は省きますが、実質的に25%の投票率で「罷免」できるという歪(いびつ)なものです。(*その後この法律は改定されたそうです)
 本ニュース「№12」でも書いた通り、投票率の僅か40%(*総統選挙)で政権についた賴・民進党政権は、議会においても少数与党で、野党議員の6人以上を罷免させると、多数派になります。これは「戒厳令」を発布し、反対勢力(多数派野党)を一掃しようとした少数与党/韓国・尹政権と同じ構図です。おそらく世界中でこの「戒厳令発布」を実質的に支持したのが唯一台湾の「民進党」だったことも納得できるでしょう。その実、賴・民進党もこの“合法的クーデター”の機会を狙っていたわけです。
 リコール対象となった国民党議員24人の誰一人として、これまで「違法行為」はなく、解職理由は単に「親中国的?」だけというメチャクチャなものです。これもまた韓国・尹政権による野党攻撃と同じ構図です。
 ところで、この「リコール運動」は狂信的「台湾独立派」のグループが発動したものです。先日アメリカで「議会占拠騒動」を起こしたトランプの熱狂的支持者とよく似ています。因みに、数年前、「両岸の交流促進」を進める法案を審議中の台湾議会を襲撃し、占拠したグループはまさにこの若者たちです。
そうです!当時、日本のリベラルと称される人々でさえ:「すばらしい」「英雄的行動」「民衆蜂起」・・・と、もてはやした「事件」です!

2、賴清徳が8月にパラグアイ、グアテマラ、ベリーズなどの外交関係(?)を持つ数少ない国を訪問する予定で、そのときにニューヨークを経由する予定でした。これは李登輝から続く台湾の「トランジット外交」と称されるものです。これまでの歴代総統で、この「訪米」が実現しなかったのは一回だけ(*台湾側の都合)で、中国側の抗議にも関わらず、アメリカ側は常に応じてきたものです。
 それをトランプがあからさまに「立ち寄り」の拒否を通告しました。「台湾側」の“メンツ”さえ気にかけないトランプの“公言”に、アメリカ国内でも“外交儀礼に反する”とする反発が起こっているくらいです。
 因みに、この決定は単一のことではなく、台湾の国防部長(国防相)の訪米拒否や、有力政治家の相互訪問が中止になったことなどが報じられています。
 トランプらしい“露骨さ”とは言え、中国との「関税交渉」や「包括的戦略交渉」等を控えて、「台湾問題」が“足枷”になることを恐れた結果と評されています。「台湾」はアメリカにとって単なる「駒(こま)」に過ぎないという現実を台湾民衆も否応なく目にしたことでしょう。

3、賴清徳総統は、民進党各派の中でも、「親日媚米」傾向が強く、最も過激な独立志向を持つ「新潮流」という派閥に属しています。日本で言えばさしずめ「親米極右」と言える存在です。政権発足後から一貫して「抗中(国)保台(湾)」を掲げ、親中勢力は言うに及ばず、「中国との民間交流」や「中国的なるもの」に対してさえ、あからさまな攻撃を繰り返してきました(本ニュース「№12」参照)。そればかりか、野党の一つ=「民衆党」党首の柯文哲を政治献金の虚偽記載“疑惑”・汚職“疑惑”で逮捕するなど、頼清徳政権の言論弾圧や強引な政治手法は一般民衆の反感を買い、特に、「リコール運動」に際し、頼清徳が公然と「野党は濾過(ろか)されるべき不純物」という趣旨の発言(6月24日)に至っては、もはやファシズムの再来と感じたことでしょう。

4、こうした賴政権のファッショ体質に対する警戒感と、トランプによる台湾への無謀な要求に対し、賴政権が何ら抵抗することもなく汲々と応じるのではないかという不安が相まって、賴政権、または賴清徳個人への評価が急落していることからも覗えます。
 台湾の「護国神山(*国の大黒柱)」と称される「台積電(TSMC)」さえアメリカに「献上」し(本「ニュース№20参照」)、軍事予算の大幅引き上げや兵役の大幅延長等々、民衆の生活に直結する課題が目白押しに逼ってきている現状では尚更と言えます。(因みに、アメリカに対し媚びるだけ媚びながら、台湾への「追加関税」が、日・韓以上の20%になりそうな状況に台湾社会では衝撃が走っています)

以下、直近の世論調査の結果を見てみます(*『美麗島』という民進党系の報道機関による)。
 賴政権への信任度は24年度(8月)の約59%から、25年度(7月)には約37%まで暴落しています。逆に、不信任が(同)約30%から50%に急伸しています。
 また、賴清徳の施政に対する満足度も、同じく54.4%から34.6%に暴落、逆に不満度が約33%から56.6%に急伸しています。
 加えて、賴政権の残りの任期(約2年)に対する期待値の統計(同)では、楽観が「52.6%」から「22.2%」に急落、悲観では「38.1%」から「63.6%」に急伸しています。
 因みに、この数値は、トランプによる「追加関税」発表前の数字です!

5、賴清徳が就任後、やったことと言えば「抗中保台」を掲げて台湾民衆の「敵視」と「憎悪」を煽り、社会に「分裂」を持ち込む以外、こと「民生面」での施政成果は皆無と言えます。近年起こった大規模停電や地震、つい先日起こった高雄を中心とする水害に対する民進党政権の「無策」に対し民衆の怒りが高まる中、さらに、賴政権が台湾民衆が過去30年にわたって延々と築いてきた“財産”を“のしを付けて”アメリカに差し出す醜態を目の当たりにして、台湾民衆も騙され続けるはずはありません。
 こうした“逆境”に対し、賴政権は「反省」と「謝罪」をするどころか、さらに火に油を注ぐように見え透いた「嘘」を積み重ね、民衆の反発をさらい強めています。

 「リコール運動」の大敗に際し、賴清徳は:「私はリコール運動にまったく関係していない。リコール不成立は、中国の影響が台湾社会に如何に“浸透”しているかを証明するものである・・・ウンヌン」と嘯く。「論理の逆転」の典型と言えるでしょう。
 また、民進党内でも8月23日に予定されている別の国民党議員7人を対象としたリコール投票を中止するよう提言した議員が“利敵行為”として袋叩きに遭うという醜態も晒しています。
 また、「アメリカへの入国拒否」についても、賴清徳はメンツを保つために平然と:「外遊の予定そのものがなかった。情報はフェイクだ」と言い出す始末です。トランプの発言は“嘘”で、訪問予定のパラグアイ、グアテマラなど訪問予定国の発表も“嘘”で、中国政府の訪米に際しての「抗議声明」も“嘘”で、何より台湾のマスコミ報道(民進党系を含め)もすべて“嘘”と言いたいようです。
 こうした「無反省」と「無責任」から、見え透いた嘘を平然と語る賴清徳(政権)に対し、台湾民衆の不信感は一層高まり、賴政権の「無能ぶり」に加え、賴清徳個人の「人格」への懐疑が加わり、先の「世論調査」の結果となって現れたと言えるでしょう。
 因みに、トランプによる「追加関税」の詳細について、賴政権は交渉における「密約?事項(*「税率」以外の妥結項目)」については今だ“非公表”を貫いています。これが国会で明らかになったとき、賴政権の命運も尽きることでしょう。(*因みに、賴政権がリコール運動を急いだ理由も、大敗しながら引き続き8/23のリコールを強行しようとする理由もこの為に他なりません)
                                   2025/8/6  墨面記